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俺は結局あの後祥と9時頃までバッティングセンターで遊び、今ようやく帰宅した。
俺は無言でドアを開けた。
『ただいま』なんて言葉、もう長い事言っていない。
俺はそのまま2階の自分の部屋に上がろうとした。
だが、
「心一、ちょっと来なさい」
リビングから父親の声がした。
ダリィとは思ったが俺はリビングのドアを開けた。
すると、リビングのソファーに親父とお袋が険しい顔をして座っていた。
「なんだよ?説教か?」
そう言いながら、俺は反対側のソファーに腰を下ろした。
説教なんて珍しい事じゃない。一週間に一度はある。
だが、どことなく親父の顔がいつもより険しい気がするのは気のせいか?
そんな事を考えていると、親父がゆっくりと口を開いた。
「心一、落ち着いて聞いてくれ…」
「なんだよ?」
「父さんの会社がなぁ………倒産したんだ…」
最初は正直、くだらない定番の親父ギャグかと思った。
迂濶にも少し笑いそうになった。
だが、親父はそんなギャグを言う人間じゃないし、何より真面目な顔で言っている。
段々と実感が沸いてきた………。
「………どうすんだよ親父?まさか多額の借金とかできちまった訳じゃねぇよな?」
俺は平然を装って親父にそう尋ねた。
内心は正直、かなり動揺している。
「安心しろ、借金はない。だが、この家は手放さなけれはならなくなったし、貯金もほとんど持っていかれてしまった……」
親父はそう言って、申し訳なさそうに顔を伏せた。
こんな小さくなっている親父を見るのは、生まれて初めてだ。
「じっ、じゃあどうすんだよ!?お袋の給料だけじゃさすがに暮らせねーだろ!?」
俺はついに平然を装う事ができなくなり、柄にもなく情けない声でそう尋ねてしまった。
「わかってるわ心一。だから2人で話し合って決めたの……」
「……何をだよ?」
俺がそう問いかけると、お袋は親父と同じように小さくなりながら口をゆっくりと開いた。
「しばらくは、亡くなったお婆さんの実家に住む事にしたわ」
「………はっ?」
俺の思考は、一瞬停止した。
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