七夕の願い

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「到着ぅ~♪」 雨音はそう言ってババチャリの荷台から降りて、神愛樹に駆け寄っていった。 「やれやれ、元気だなぁ」 「ところで心一よ。一体何しに来たんかぇ?」 ベルの上の婆ちゃんが、海苔巻きせんべいをかじりながらそう尋ねてきた。 「あぁ、その……短冊の皆の願いを婆ちゃんに叶えてもらおうかと………」 「無理に決まっとろうがバカモンが」 婆ちゃんは呆れ顔でそう言うと、ズズズッとお茶をすすった。 「俺だって無理なのはわかってるけどさぁ、雨音にはこの前の借りがあるから断れなかったんだよ。だからせめて願いの1つぐらいは………なっ?」 「どちらにせよ願いを叶えられるかどうかはお前の思い次第じゃな」 婆ちゃんはそう言って、お茶を片手に小さく溜め息をついた。 その時、 「何してるの心ちゃん?早く早く~♪」 雨音が大量に飾られている笹の前で俺を呼んだ。 「そんじゃあ俺、行ってくるから」 俺は婆ちゃんにそう言い残して、カゴに入れてきていた懐中電灯を片手に雨音の元へと歩み寄った。 「なぁ雨音、こんなに真っ暗じゃ短冊の文字見えないだろ?」 「全然見えるよ♪神愛樹の神様達が照らしてくれてるから♪」 雨音はそう言って微笑んだ。 そういえばコイツには普段から神様が見えるんだったっけな……。 「心ちゃんも神様見る?」 雨音はそう言って右手を差し伸べてきた。 「いやっ……今日はいいわ」 俺はそう言って断った。 婆ちゃんに見られてる前で手なんか繋いだら、後でどれだけ弄られるかわかったもんじゃねぇからな。
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