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「だから、心ちゃんが来てから釣りとか体育とか七夕とかばかりしてるのは、心ちゃんに早く学校に馴れてもらう為なの。机にかじりついて勉強してても、学校には馴れないでしょ?」
雨音にそう言い直されてようやく言葉の意味を理解した俺は、動揺を隠す事ができなかった。
まさか先公が、俺の事をちゃんと考えてくれていたなんて、俺は夢にも思っていなかった。
「……言われてみれば、そのおかげで確かにこの環境に馴れてきたかも知んねーな」
俺が少し和らいだ表情でそう言うと雨音は優しく微笑み、更に意外な事を話し始めた。
「実はね、なっちゃんも結構都会の方からこの村に来たんだよ」
「えっ?そうなのか!?」
俺が驚きを隠せずに思わずそう言うと、雨音は昔を思い出すように空を見上げて、ゆっくり話し始めた。
「なっちゃんはね、教師試験に受かって今から大体1年前に初めて赴任してきたのがこの飛鳥村高校だったの。最初は心ちゃんみたいに、田舎なこの村に凄い失望したみたいで全然今みたいな元気がなかったの」
元気のない先公なんて想像すらできない俺は、意外な話に驚きながらも雨音の話を聞き続けた。
「それでね、私と官ちゃんで釣りに誘ったり今日みたいに七夕したりしてたらね、だんだん今みたいに元気になったんだよ♪」
「……そうだったんだ」
「だからなっちゃんを嫌いにならないであげて。少し強引な所があるけど、凄くいい私達の先生なんだから♪」
雨音にそう言われて、俺は返事をする変わりに微笑みで返した。
俺も先公も素直じゃないから少しだけ時間がかかるかも知れないけど、俺も先公と仲良くなれる気がする。
そんな気がした。
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