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「心一、目の前は曲がり道じゃぞぃ!」
「はっ!?うわぁぁぁ!!」
婆ちゃんに注意された俺は急いでハンドルをきり、間一髪で転けるのを避ける事ができた。
「危なかったね~♪」
「お前のせいだろーが!!」
俺は冷や汗をダラダラ流しながら、雨音にそう怒鳴った。
「そういやさぁ、雨音は叶えたい願いとかない訳?短冊にあった願いは人の為の願いばっかじゃんか」
俺はそう言って、ふと思った疑問を雨音に聞いてみた。
「う~ん……ない訳じゃないけど………」
「何だよ言ってみろよ。もしかしたらババチャリで叶えられるかも知んねーじゃんか」
「………ううん。いいの。村の皆の幸せが、私の幸せだから」
雨音はそう言って、チャリを漕ぐ俺の背中になんといきなり抱き着いてきた。
「なあっ!?何だよいきなり!?」
「………ゴメン。ちょっと寒くて………」
「いやっ、まぁ、別にいいけどさ……」
俺は仄かに赤くなっているであろう自分の頬をポリポリ掻きながらそう言って、ババチャリを漕ぎ続けた。
気のせいかも知れないが、背中に抱き着いている雨音が少し泣いているような気がした。
沢山の神様の光に照らされた神愛樹に飾られた沢山の笹。
その中の1本の一番上にある短冊が、ヒラヒラと宙を舞って地面に落ちた。
その短冊に書かれた文字を、神愛樹の神様達が照らした。
そこには、こう書かれていた。
【夏が終わらないでほしい。 海野雨音】
この短冊の願いの意味を心一が知るのは、まだまだ先の事………。
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