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七夕の日から時間が流れ、遂に7月も後半に入った。
日に日に暑くなる夏の日射しの下を、俺は今日も汗だくになりながらババチャリを漕いで学校に向かっていた。
「暑い……死ぬぅ………」
「若いクセに情けないのぅ心一」
婆ちゃんはそう言って、自分だけかき氷を食べてやがる。
「なぁ婆ちゃん、俺にもアイスとか冷たい麦茶とか出してくれよ!」
「じゃあ必死にペダル漕いで願ってみぃ」
「んな気力残ってねーよ!!」
暑さでイライラしている俺は、婆ちゃんにそう怒鳴った。
あぁ…今のでさらに喉が渇いちまった……。
「それなら叶えるのは無理じゃの~。あ~、かき氷が歯にしみるわぃ」
「けっ、入れ歯のクセに歯にしみる訳ねーだろが」
「何か言ったかぇ心一?」
「別に~」
俺と婆ちゃんはそんな会話をしながら、学校に向かって行った。
「うぃーっす」
俺はそう挨拶しながら腐りかけの木製の引き戸を開け、教室に入った。
「ようやく遅刻しないようになってきたわね心一」
「夏のドS調教を味わうのは真っ平ゴメンなんでな」
俺はそう言って夏に憎まれ口を叩いた。
ちなみに俺は七夕の日以来、『先公』ではなく本名の『夏』と呼んでいる。
理由は、まぁどうしても『なっちゃん』とは呼びたくなかったからだ。
「心一、『夏』じゃなくて『夏さん』でしょうが!もしくは『なっちゃん』!」
「『なっちゃん』は死んでもゴメンだね。さん付けなんていらねぇよ。夏でいいだろーが夏で!」
「………退学!」
「なんで!?」
もはや当たり前の光景となった俺と夏のこのやり取りを見て、雨音と官九郎は腹を抱えて笑っていた。
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