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その後俺と雨音は15分程森の中を探索したが、さっき捕まえたカナブンに続く虫は見当たらなかった。
「いないねぇ~」
「そうだな。場所変えてみようぜ雨音」
「そうだね♪」
そうして俺達は、官九郎と夏と別れた場所に一旦戻ってきた。
すると、夏は木陰で気持ちよさそうに寝息を立てていた。
《虫取りしてねーじゃねぇかよこの野郎。俺だって昼寝してぇよ……》
俺がそう思いながら夏を見下ろしていると、俺の頭にナイスなアイデアが浮かんだ。
「そうだ!雨音、さっき捕まえたカナブン出してくれ!」
「いいけど何に使うの~?」
「こうすんだよ!ケッケッケッ……」
そう言って俺は雨音の虫籠からカナブンを取り出し、寝ている夏の頭の上に乗せてやった。
夏は『虫があまり好きじゃない』っつってたから、目覚めた途端大騒ぎだぜ!
「ケッケッケッ……」
「ねぇ心ちゃん、カナブンが頭から下に降りてくよ」
「えっ?」
雨音にそう言われてカナブンを見ると、確かにカナブンは頭から下に向かって降りていっていた。
そして、そのまま首元から夏の服の中に入っちまった。
これは予想外だ……。
「ありゃりゃ~、服の中に入っちゃったね♪」
「………かっ、官九郎の様子見に行こうぜ雨音!」
「うん♪いいよ~♪」
そうして俺は雨音を連れて、その場から逃げるように走り去った。
数秒後、夏の断末魔の叫びのような声が聞こえたが、きっと気のせいだろう。
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