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「どうだ官九郎?虫捕れてるか?」
夏の元から逃げ出して官九郎の元に到着した俺は、官九郎の姿を見て呆然とした。
官九郎は虫取り網を地面に置いて、変わりになんと釣竿を木に向かって伸ばしていた。
「……何してんだお前?」
「おぉ、心一に雨音か!いやぁ~、やっぱり釣竿の方がしっくりくるもんでな。ハハハ!」
そう言って官九郎は、呑気に笑った。
「つーか釣竿で捕れる訳ねーだろが!」
「見て見て心ちゃん!沢山捕れてるよ♪」
「嘘っ!?」
雨音にそう言われて虫籠を覗いてみると、確かにカブトムシやクワガタムシがうじゃうじゃと捕れていた。
「ハハハ!俺に釣れないものはないのじゃ!」
「官ちゃんすごーい♪」
雨音はそう言って絶賛の拍手を送った。
つーか、虫が釣れるって絶対おかしいだろ………。
俺が納得できずに頭をポリポリかいていると、突然すぐ側の草むらがガサガサと音を立てて動いた。
「……今、何か動いたよな?」
「イノシシか何かじゃろ多分」
官九郎は呑気にそう言って虫釣りを続けた。
もっと焦る状況じゃねぇのか!?
「でもさぁ、この辺って確かクマも出るよね♪」
「クッ、クマァ!?!?クマなんて出たら死亡確定じゃねぇかよ!なんでそんなに呑気なんだよお前らは!?」
俺がそう怒鳴ったまさにその時、草むらから黒い影が勢いよく飛び出してきた。
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