ナナ

19/19
前へ
/246ページ
次へ
「まっ、まっったく!ナッ、ナナにはしつけが必要だな!!」 俺は先程のハプニングを誤魔化すようにそう言ってナナを叱った。 だが、 「えへへ♪心ちゃんのほっぺにチューしちゃったね♪」 俺の必死の誤魔化しをぶち破るように、雨音がほんのりと頬をピンクに染めながらそう言った。 ぐあぁぁぁもう!収まれ俺の心臓!顔赤くなるなー!! 「ねぇ心ちゃん♪」 「なっ、ななな何ですか?」 脳内がパニクっていた俺は、何故か敬語で雨音に答えてしまった。 「ほっぺにチューしたのは内緒だよ。皆にからかわれちゃうから!」 「いっ、言う訳ねーだろが!大体アレはハプニングだ!!」 「とか言っても照れてるクセに~♪」 「てっ、照れてねぇよ!!」 そう言って俺は、動揺しまくりで反抗した。 チクショー、情けねぇ……。 「えへへ♪じゃあ私、家こっちだから♪また明日ねー♪」 「えっ?あっ、おう!じゃあな!」 俺がそう言うと、雨音は元気に手をブンブン振りながら帰って行った。 雨音の姿が消えてから、俺は雨音の唇が当たった左頬にそっと触れた。 「くそっ、ダサすぎるぞ俺……」 俺がそう呟きながら下を向くと、ナナが尻尾を振りながらお座りして俺を見ていた。 「お前……まさか狙ってやったのか?」 そう尋ねても、勿論ナナは何も答えない。 「変な犬だなぁお前。んじゃあ帰るか」 そう言って俺は、ナナと共にオレンジに染まる空の下を歩き出した。
/246ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18310人が本棚に入れています
本棚に追加