第6章:吹奏楽コンクール 1996

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8月の暑い日だった。 予選当日、俺達の高校は午後からの出演だった。 朝から学校で練習し、その後、みんなで予選会場の【練馬文化センター】へ電車で移動する。 打楽器を運ぶ人達だけは、トラックに乗って移動する事になっている。 何故だかあの時は、それが羨ましく感じたものだ。 この頃には、新品ではないが自分のクラリネットを買って貰っていた。 自分のだからというのもあるが、丁寧にケースにしまい、抱きかかえるように相棒を連れて、会場に向かった。 ちなみにその数年後、その時使った電車を、今度は通勤で使う事になる。 これも何かの縁なのかも知れない。 会場に到着し相棒を組み立て、本番前、最後の練習をし、ステージに向かった。 その後の本番は覚えていない。 というか、そこからの記憶が薄い。 いつの間にか終わっていたのだ。 表彰式が最後に行われた。 結果は金賞という喜ばしい結果だったが、次の大会には進めなかった。 やはり、1年で全国大会に行けるほど甘くはない。 ただ、なぜか悔しいという気持ちは出てこなかった。 俺は、何も貢献出来ていないという事を分かっていたからだと思う。
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