第7章:76本のトロンボーン

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マーチングの練習は想像以上に過酷なものだった。 俺達の部活は、全員合わせても50人弱しかいない。 端から見たら十分過ぎる人数なのだが、全国の強豪校は100人以上の部員が在籍し、夏のコンクールとマーチングを、別々のメンバーで練習したりしている。 俺達にはそんな余裕は無い。 全員でどちらとも出るしかない。 このマーチングの大会には課題曲はないが、『64拍連続足踏み』や『外周1周』などの課題項目があった。 20M×30Mの舞台を、ドラムメジャーを先頭に4人1列で縦長に行進をする。 俺の位置は、その縦長の真ん中ぐらい。 このマーチングの練習は、1人欠けただけでも意味がないのだ。 同じ動きを、全員で揃える所が見せ所なのだから。 実際に1人欠けてしまうと左右、前後の感覚が分からなくなってしまう。 俺達の高校は全員で出場するので、補欠というかサポート要員がいない。 休みの人などが出てしまうと、どうなるかと言うと、俺が、その人の場所に入り、その人の動きを演じる事になる。 結局、本番直前まで誰かしら欠員は出てしまっていた。 そうなると、いつまで経っても、自分の練習は出来ない。 今、思うと、かなり勉強になったのだが、その時は本当に嫌だった。
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