第7章:76本のトロンボーン

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そんな中、本番3日前ぐらいに、顧問と講師に呼ばれた。 「申し訳ないが、今回は出場を諦めてほしい」 やはり、サポート的な要員が必要との事だった。 俺は心が折れそうになってしまった。 正直、気持ちの切り替えなど出来やしない。 「なんで俺が?」 率直な気持ちだった。 俺は、誰よりもマーチングを勉強したし、誰よりもマーチングを好きな自信もあった。 ただ、この大会を勝ち上がれば次の全国大会には、俺も出れるはずだ。 そう思い込むようにして、俺はサポートに回った。 本番当日。 始発で、会場の【有明コロシアム】に行き、外の練習会場の場所取りや準備をする。 直前の練習を終え、先生やみんなは会場に入っていった。 練習を休んでたりしてたメンバーも、その時は全員揃って、楽しそうに会場に入っていった。 子供達の晴れ舞台を見ようと、保護者達も会場に入っていく。 俺は一人、みんなの荷物を見張る為、外で待つ事になった。 結局俺は、本番に出る事も、本番を見る事さえも許されなかったのだ。 正直、本当にこの時はきつかった。 本番が終わり、達成感に満ちた顔で引き上げてくるみんなを、俺は笑顔で出迎えた。 その時の俺は、ちゃんと笑えてたのかな? タイムマシーンがあったら、是非とも見てみたい。 最後に表彰式が行われた。 結果は……銀賞だった。 これだと、次の大会には進めない。 その時に、本当に思った。 「こんな思いをする人を絶対に作っちゃいけない。俺がドラムメジャーになったら、誰一人欠ける事無く、全員で全国大会に行ってやる」 偽善っぽいが、本当にそう思ったのだ。
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