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なんだか無性に母さんに会いたくなってしまった……。
僕が生まれた時はどうだったんだろう……。
しばらく歩くと馬がつながれているところに着いた。
「じゃ、俺達馬だから。」と、和輝。
「あら、乗せてってくれないのぉ。」と、響子。
「いいケド、翔が……。」
見ればさっきの元気はどこへやら、恵美の後ろに隠れて固まっている。
「翔?どうする?……」
「今日のオヤツさっき作ってたアイスだよ。早く帰れば早く食べられるよ?」
「やっぱり馬、怖い?」
翔は下を向いたままだ。
「どうする?翔?」
恵美がもう一度聞く。
「無理しなくていいよ。バスもあるし……。」
「でも、いつ来るんだ?」
「わりと待たずには乗れるはずだけど……。」
すると翔が、
「……いい……俺……馬、乗って帰る……。」
と、ものすごく小さな声で答えた。
「ええぇっ!」
僕は驚いた!みんなも驚いた!
「だって…アイス…早く食いたいし……。」
おおっ!アイスの力は偉大だっ!
「翔!よく言った!」
「大丈夫?」
あんまり大丈夫ではなさそうだ。顔が真っ青になっている。
「……それに……馬に乗れないと……どこに行くのも結構大変だし……。」
翔はブツブツ言いながら決心を固めているようだ。
「よしっ!翔、乗れっ!」
僕はできるだけ明るく言った。
「うんっ!」
翔の顔におびえは見えなかった。
結局、僕の馬に翔と恵美が、和輝の馬に響子が乗って、宿舎に帰り着いたのだが……。
「兄ちゃんっ!俺っ!もう馬、平気だからねっ!一緒にどこでも行こうねっ!」
どうやら妙な自信をつけてしまったようで……。
(明日から……また翔がついて来るのか……。)
明日からの事を考えて、僕はコッソリため息をついた。
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