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―そして、次の日―
今日の作業場はサイロエリアだ。
数日前に刈り取って干してある草を運ぶだけのわりと簡単な作業なのだが……。
「暑いっ!」
冬の間の飼料にするためには草を乾燥させなければならない。その為この場所には夏の間は“雨”が降らないように設定されている。
結構空気も乾燥しているからか、抱えている干し草にも熱がこもっていて……。
「あづい~っ!あづあづあづあづ~っ!」
例によって、大騒ぎしているのは翔である。
「だぁから、《ティンカーベル》で遊んでろって言ったろ。」と言うと、
「だぁって、つまんないだもん。いじめられるし…。」と、翔が答える。
(……そうだろうなあ……。)
《ティンカーベル》とは、20世紀の田舎の学校(木造校舎と広い校庭)を模して作られている施設で施設遊具もいろいろ設置されている。
保父、保母の資格を持ったネバーランドの職員が十数名常駐し、10歳未満の子供を対象にいろいろな遊びを教えてくれたりもする。
翔のような子供が日中を過ごす為の施設だ。
ちなみに11歳以上は《フック》という施設があり、こちらの方で遊ぶ事が多いようだ。
ここは図書館や博物館、体育館が隣接していて、本や何かしらの実験器具、スポーツ用品の貸し出しがあり、指導してくれる職員もいる。
どちらも強制的にそこで過ごさなければならない訳ではなく、営業時間午前9時から午後5時までなら、いつ行っていつ帰ってもOKだし、もちろん10歳の僕らだって利用する事ができる。
話を戻そう。
翔は人懐っこいやつだが、空気が読めないし、やたらしつこいし、うるさい。
その為、なんか仲間外れになってしまったようで、あまり行きたがらない。
だからって僕につきまとわなくたって……。
だが、翔曰く、
「だぁって、兄ちゃん優しいし、いじめないし、遊んでくれるし…。」
そんな気はまったく無いぞ!
「大変だねぇ~保父さん。」
仲間がはやし立てる。
「っるせっ!」
「でも、年下の子の扱い上手いよな。」
と、和輝まで言う。
「…しょうがないよ…。同じ宿舎に男はコイツだけだし、泣くと余計にうるさいし…。」
「でも、わりと面倒みるの、慣れてないか?」
「……うちの親さ、友達をよく呼ぶんだけど、たいがい子連れでさあ……。結構子守やらされたんだ……。」
「こんなところで役にたつとはねぇ~。」
(あんまり嬉しくない……。)
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