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翔は文句をいいながら、ハッキリ言って邪魔だけど、一応手伝っている。
「わっせっ! わっせっ!」
「えんやぁとっと! えんやぁとっと!」
「おっかぁちゃんのためなぁら、えんやぁこぅらっ」
掛け声も様々である。
「しっかし、真面目だよなあ。俺達って……。」
「……まったく……。」
別に、この体験プログラムだって強制ではない。
さぼって、《ティンカーベル》や《フック》に行ったところで、怒られる事は無い。
だが、あんまりさぼると滞在費を請求されるという噂がある。もちろん格安だそうだけど……。
だから、たいがいの親達はさぼらないように言い聞かせて送りだす。
その上、この作業はボランティア(無料奉仕)ではない。
働いた分、最後の日にお小遣いとして、お給料がもらえるのだ。
宇宙港のお土産売り場で、好きなお土産を買って帰れるというのは、結構楽しみである。
そして、もうひとつの楽しみは……
「今日のオヤツはなあにっかなっ」
「アイスだといいなっ!アイスだといいな!」
翔は早くもオヤツが気になるようだ。
つまり、年齢にかかわらず、作業に参加した人間はオヤツがもらえるのである。
ここは牧場エリアなので、乳製品のオヤツが出る事が多い。
ヨーグルトだったり、チーズケーキだったり、アイスクリームだったり……
もちろん《ティンカーベル》や《フック》でももらえるが、こちらは有料なので、(たいした金額ではないが)親達はなるべく作業に参加してもらう様に、出発前に必ず子供に伝えるようだ。
まあ、以上の理由で、僕らは(僕は)真面目に作業に出ている。
午前中だけだしね。
やがて……
「オヤツですよ~!」
「やったぁ!」
今日のオヤツは〈サワーグルト〉。
ヨーグルトのシャーベットである。
「やったぁ!、アイスだっ!」
「アイスじゃない。〈サワーグルト〉。」
オヤツを片手に、みんなで一休み。
20分程、休憩になる。
「ねぇ!兄ちゃんっ!探検に行こうよっ!」
翔はやたらと元気だ。
「あぁっ!? まだもうひと仕事残ってるから、休んでるよ。」
「えーっ!つまんないよーっ!」
「いいから、行きたきゃ一人で行ってきな。」
「えーっ!」
ブツブツブツブツ……。
翔は文句をいいながら、サイロがたくさんある方へ歩いて行った。
そして、休憩が終わる頃……
「兄ちゃんっ!変なモノ見つけたっ!」
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