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「変なモノ~?!」
僕は、うんざりして翔の顔を見た。
「うんっ!変なモノっ!」
翔の顔は興奮して真っ赤になっている。
「ふ~ん、今度はどんな虫だ?」
翔は何回も
「兄ちゃんっ!この変なモノ何っ!」
と、バッタだの蝶だのカマキリだのを持って来たのだ。
確かに都会育ちの僕らにとっては虫なんてめったに見ないし、変なモノだけど……。
「違うもんっ!建物だもんっ!」
「じゃあ、どんな物置だ?修理小屋か?」
と、和輝が茶化す。
「違うもんっ!物置なんかじゃ無いもんっ!」
翔は頑固に言い張る。
「いいから来てっ!早くっ!」
翔は僕の腕を引っ張った。
「どうする?」
僕は和輝に救いを求めて話しかけたが……
和輝は肩をすくめると、
「付き合ってやれば?保父さん。」
と、冷たくいい放った。
「薄情者ぉ~っ!」
僕は翔に引っ張られるまま渋々立ち上がる。
「兄ちゃんっ!早くっ!」
「わかったよ!引っ張るなよ!」
僕は翔に引きずられるように走り出した。
「行ってらっしゃ~い!早く帰って来いよぉ~!」
和輝が呑気に声をかける。
(チクショウめ……。)
これで何のヘンテツも無い建物だったら翔となんか絶対に遊んでやらんゾ!僕は保父さんじゃないんだからな!
僕は密かに決心して、翔を追いかけた。
翔はサイロが幾つも建つ場所を、奥へ奥へと進んで行く。
必死に追いかけないと見失いそうだ。
「兄ちゃんっ!早くっ!こっちだよっ!」
翔は僕に声をかけながら走っている。
「ほらっ!……兄ちゃんっ!……あそこっ!」
さすがの翔も息が切れている。
声のトーンも少し下がった。
翔が指で示した先には、小さな建物があった。
(……なんだ?……あれ?)
確かに変な建物だ。
高さは2mぐらいしかないし、奥行きも1~2m、まるでドアだけの建物に見える。
「ねっ!変だろっ!」
翔が嬉しそうに僕に言う。
「ああ……確かに……変だ……。」
サイロの影に隠れるように建つその建物は確かに“異質”な感じがした。
(まさか……な……。)
僕はゆっくりとその建物に近付いた。
そして、恐る恐るその建物のドアノブに手をかける。
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