741人が本棚に入れています
本棚に追加
結局、翔は説得されて《ティンカーベル》に向かった。
後でわかった事だが【星の思い出】の建物の入口のドアが開けられると《ティンカーベル》に信号が送られて、そこの職員に【星の思い出】が発見された事がすぐにわかるようになっているんだそうだ。
その信号を確認すると《ティンカーベル》の職員は、翔のように【星の思い出】を使用しに行く子供と一緒にいる10歳未満の子供達を《ティンカーベル》に誘導する為パトロールを行なう。
そういう規則があるんだそうだ。
余談だが、“さいちゃん”の本名は“斉藤則子さん”、“まるちゃん”の本名は“丸山知恵さん”というらしい。
(後で翔から聞いた。)
翔が《ティンカーベル》に向かってしばらくすると、行列が動き始めた。
1時になったのだろう。
(いよいよだ!)
僕は午前中に翔とくぐったドアを、今度は和輝と一緒にくぐる。
空調が効いたほの明るい階段を降りて行くと、ちょっと広いフロアに出た。
右のドアが【星の思い出・牧場エリア】そして、左のドアは……
「なあ、和輝。あれには笑ったよな?」
「ん?……ああ、ウケたな。」
左のドアの看板には【アンドロイド収納庫】とあった。
「最初にこっちを読んでたら、間違いなく暴れたよ。」
「絶対な。」
実は、和輝と【星の思い出】を探している時にも何回か【アンドロイド収納庫】を見つけているのだ。
「『見つけた!』って思うとさ。」
「たいがい【アンドロイド収納庫】でな。」
「何回騙されたっけ?」
「……思い出したくねぇよ……」
さっきは開かなかったドアが開放されていた。
行列に並んだ子供達(あ、僕らもか?)が吸い込まれるように入って行く。
その先には広いフロアがあり、何台ものコンピュータが並んでいた。
とりあえず、端末が何台もある事がわかって僕はホッとした。
だが、ざっと見渡したところ、ほとんどの端末が使用中だった。
「……空いて無いな。……」
「……うん……」
フロアの中をあちこち探していると……。
「あ、あったゾ!」
「ドコ?」
角の方に辛うじて数台、空いている端末があった。
僕らは、それぞれの端末ブースに入ってコンピュータを起動させる。
〔個人情報チップを入力してください。〕
僕は左腕に埋め込まれているチップを機械の入力装置にかざした。
最初のコメントを投稿しよう!