星の思い出―牧場エリア―

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結局、翔は説得されて《ティンカーベル》に向かった。 後でわかった事だが【星の思い出】の建物の入口のドアが開けられると《ティンカーベル》に信号が送られて、そこの職員に【星の思い出】が発見された事がすぐにわかるようになっているんだそうだ。 その信号を確認すると《ティンカーベル》の職員は、翔のように【星の思い出】を使用しに行く子供と一緒にいる10歳未満の子供達を《ティンカーベル》に誘導する為パトロールを行なう。 そういう規則があるんだそうだ。 余談だが、“さいちゃん”の本名は“斉藤則子さん”、“まるちゃん”の本名は“丸山知恵さん”というらしい。 (後で翔から聞いた。) 翔が《ティンカーベル》に向かってしばらくすると、行列が動き始めた。 1時になったのだろう。 (いよいよだ!) 僕は午前中に翔とくぐったドアを、今度は和輝と一緒にくぐる。 空調が効いたほの明るい階段を降りて行くと、ちょっと広いフロアに出た。 右のドアが【星の思い出・牧場エリア】そして、左のドアは…… 「なあ、和輝。あれには笑ったよな?」 「ん?……ああ、ウケたな。」 左のドアの看板には【アンドロイド収納庫】とあった。 「最初にこっちを読んでたら、間違いなく暴れたよ。」 「絶対な。」 実は、和輝と【星の思い出】を探している時にも何回か【アンドロイド収納庫】を見つけているのだ。 「『見つけた!』って思うとさ。」 「たいがい【アンドロイド収納庫】でな。」 「何回騙されたっけ?」 「……思い出したくねぇよ……」 さっきは開かなかったドアが開放されていた。 行列に並んだ子供達(あ、僕らもか?)が吸い込まれるように入って行く。 その先には広いフロアがあり、何台ものコンピュータが並んでいた。 とりあえず、端末が何台もある事がわかって僕はホッとした。 だが、ざっと見渡したところ、ほとんどの端末が使用中だった。 「……空いて無いな。……」 「……うん……」 フロアの中をあちこち探していると……。 「あ、あったゾ!」 「ドコ?」 角の方に辛うじて数台、空いている端末があった。 僕らは、それぞれの端末ブースに入ってコンピュータを起動させる。 〔個人情報チップを入力してください。〕 僕は左腕に埋め込まれているチップを機械の入力装置にかざした。
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