種子島宇宙港―旅立ち―

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僕の名前は中島稜。年齢は10歳。 ある大企業に勤める母と2人暮らしだ。 そして今日から夏休み。 ある計画を実行するために人工衛星No.175(衛星名ネバーランド)に行くところである。 「じゃあ母さん、行って来ます。」 「気をつけてね。私も休みが取れ次第行くから…。」 (こなくていいよ…。) 僕は心の中で呟いた。 (母さん来たら計画がパアじゃん。) 「こんな時じゃないとネバーランドに行けやしないし…。」 勝手に興奮している母を見ながら僕はコッソリため息をついた。 成人のネバーランドの入場料および滞在費はだいたい普通のサラリーマンの年収の3分の1。これが10歳の子供の2親等以内の親族なら月給の2分の1ぐらいに割引きされるので、(もちろん滞在期間にもよるが…)たいていの親や兄弟は便乗して一緒に行くか、後から合流するのだ。 「懐かしいわねえ…。あんたも最初は大変だと思うけど、慣れればものスゴク楽しいところよ~!」 「……母さん…そのセリフ、100回聞いた…。」 「あら!そうだった?」 (まったく、僕より興奮して…。) やがて、搭乗案内が携帯モバイルに表示された。 「あ、搭乗受付開始だって。」 「大丈夫?忘れ物無い?稜と2日以上離れた事が無いから心配で…。」 「大丈夫だよっ!母さんだって行った事あるんだろっ!」 ちょっと怒ったように僕は答えると搭乗ゲートに向かった。
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