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「ねぇねぇ!宿舎何番?」
ふいに隣りの子供が話し掛けてきた。
大きな瞳を輝かせ、顔いっぱいにでかでかと“好奇心”と書いて僕の顔を見つめている。
「No.8だけど…」
「わっ!兄ちゃん、俺と一緒だっ!」
“一緒の場所で嬉しい”と、また顔いっぱいに書いてニコニコと笑った。
(年は7歳ぐらいかな?誰と一緒なんだろう?)
「あのねっ!、あのねっ!、俺ねっ!、お姉ちゃんと来たんだよっ!」
「ふ~ん」
「お姉ちゃんあそこっ!」
見ると後の方で女の子が固まっておしゃべりしていた。
「だからねっ!、俺つまんなくってねっ!、前の方に来たんだよっ!」
(叫ばんとしゃべれんのか。このガキは…)
耳が痛いなあ…と僕は思いながら適当な返事をしていると、
『宿舎No.8…後、5分で到着です。』
「あ、そろそろ到着だって。」
すると後から、
「翔!降りるのよ!」
と、元気な声が響いて来た。
長い髪をポニーテールに縛っている。
「あ、姉ちゃんっ!この兄ちゃんも宿舎No.8だってっ!」
「わかった、わかった…ちゃんと荷物持って…」
彼女は、僕に話しかけて来た男の子に小さなリュックを持たせたりして、アタフタと降りる支度をさせた。
「私、神崎恵美。この子は弟の翔。よろしく!」
ふいに女の子が僕の方に振り向いて話し掛けてくる。
「……よろしく…中島稜です…。」
幾分緊張しながら僕は答えた。
「宿舎No.8なんだって? あそこは後、私と同じ女の子が一人みたい。」
と、話しているところへ
「私、桜庭響子よろしく!」
同じような格好をした女の子が後から押し出されるようにでてくる。
「…よ、よろしく、中島稜です…。」
ちょっとドギマギしながら僕は答えた。
やがてバスは宿舎No.8前に停まり僕らはバスから降りる。
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