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「よう、来たなあ~!」
「お世話になります。」
この会話がチェックインの代わりになる。
出迎えてくれるのは人間型アンドロイド2体。
男性型アンドロイド《おじさん》と女性型アンドロイド《おばさん》。
どの宿舎にも同じ顔、同じ姿のアンドロイドがいる。
その上どの宿舎の建物も同じ作り、というか同じ間取りである。
「あれまあ、早苗ちゃん?…の訳、無いわねえ?」
「『早苗』は母です。私は響子。」
「あら~お母さんそっくりねぇ~。」
「こっちは理恵ちゃんかい?ちっこい坊主つれて?」
「恵美です。『理恵』は母です。」
「そうか、そうか…なんせ同じ年の時に来とるもんだからなあ~。」
これがネバーランドの特殊システム〔血族氏名〕
つまりこの中では必ず自分の一番近い身内で、なおかつ顔が一番似ている人の名前で呼ばれるのだ。(たいていは父親か母親)
自分の名前を呼んでもらう為には最低3日、少なくとも1週間は名前を訂正し続けなければならない。
だからこそ、僕はここに来れば父の名前で呼ばれるのではないかと期待していたのだが……。
「こっちは中島ンとこの坊主か。大きくなったのう。」
「……よろしくお願いします。……」
(……母さん……ロック外したの気がついちゃったかな?…)
僕は精子バンクベビーとして生まれた。(母は精子バンクに登録してあった精子を買って僕を産んだ)僕のように様々な事情で血縁者の名前を隠さなければならない子供もたくさんいる。(僕の場合、法律により成人するまで父親の情報は一切知る事ができない。よって様々なロックが地球の情報コンピューターにはかかっている。)
だがここのコンピューターは地球のメインコンピューターとは繋がりが無い。(元々アミューズメント施設だし。)だから、そういう事情がある子供は申し込み時に保護者がロックを掛けるのだが……。
僕は母の隙を見て出発直前にそのロックを外して来たのだ。
「う~ん、誰かに似とるようだが……思い出せん!」
(しめた!母さんまだロックかけ直してない!)
ここにいるアンドロイドの情報は30年ごとに更新され、それ以前のデータは名前を再インプットしなければその名前では呼ばれない。
申し込み時に再インプットするかあるいは自分でここのアンドロイドに父或いは母の名前を教えればやはりその名前で呼ばれる。
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