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様々な事情で《血族氏名》システムにロックがかかっている場合、当たり障りの無い名前があがる。……たいてい保護者が予めインプットした名前だとかだ。
今、《おじさん》は『似ている人間が誰だか思い出せない』と、言った。だから父が来たのは30年以上前なのだろう……来ていたとしてだが……。
だが、この衛星が営業を始めてから約60余年。日本人でここを訪れた事の無い人間は皆無に等しいだろうと僕は思う……。
(やっぱり探さないとダメか……。)
僕が絶対に探しだしたい物、それは、この衛星のいろいろなところに隠されて設置されている記録用コンピューターの端末【星の思い出】である。
このアミューズメント施設のメインとも言えるイベントのひとつ、【宝探し】の宝だ。
ここのエリアの場合は【星の思い出・牧場エリア】であり、このエリアで誰が何をしたかを記録している。
そしてその端末から自分の血縁者がここで何をしていたのかを検索する事ができるのだ。
自分の血縁者の記録だけだが………。
ちなみに他の各エリアにもそれぞれ隠されて設置されている。
そして、この検索方法が………。
(『顔』、なんだよなあ。)
つまり自分の『顔』をインプットして、自分と顔立ちの似ている人間が何をしたかが検索できるのだ。
(〔顔検索システム〕と、呼ばれている。)
よって、血縁者だけを効率良く呼び出すことができる。(ごく稀に顔が似ているだけの赤の他人も呼びだされる事もあるようだ。)
くどいようだがもしロックがかかっているなら、僕の場合、母方の親戚筋しか表示されないはずだ。
(まず、【星の思い出・牧場エリア】を探し出して…そして…。)
(絶対に自分と顔立ちの似ている人物を見つけだしてやる…。)
もし、本当に見つかったとしても、わかるのは名前とこの衛星(の、このエリア)で何をしたかだけである。
(だけど……それだけでも…。)
自分の父親がこの世の中に確かに存在したという確信が欲しい!自分が存在しているんだから存在しない訳が無いなどという曖昧な、実感できない証拠ではなく、写真・動画などの目で見て確認できる確かな証拠が……。
これが、僕の計画のすべて………。
僕がここへ来たかった本当の理由………。
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