解体と、欠如と

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「二島君、君に客がきてるぞ」  老年の男が、二十歳かそこらのいたって普通の青年――二島文之介に声をかけた。 「客?」 「あぁ。とっとと行かんか」 「はあ、わかりました。社長」  社長とはつまり、この自動車生産工場の社長である。  ブンノスケは駆け足で休憩室へ向かった。  中にはえらくガタイのいい男がいた。歳のころは三十かそこら。スーツを着込んではいるが、そのたくましい筋肉は隠せない。黒の短髪はキチッと整えられている。 「どうも。ニトウ・ブンノスケです。……何か用で?」  汚れた作業服のまま、彼は尋ねた。
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