春休み

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その日の晩 9時を回ったあたりにケータイは鳴った。 (誰だろぅ…?) 「もしもし」 『…あっ!オレ!!分かる?今日ぶつかった男!』 「あぁ…覚えてますよ。えっと…矢野敬クン…?」 『うっそっっ名前覚えててくれたの!?嬉しいなぁ♪あっ!“敬”で良いよ!!そぅいえば、名前……』 「あぁ!!…なッ、奈々です!白鳥奈々!!」 『奈々チャンね♪』 「…私も、“奈々”で良いですよ…?」 どうせこれから関係のない人。 一週間もすれば私のメモリから彼の名前は消える。だから、名前を教えたって平気だった。…すぐ忘れられるんだから。 それから他愛無い会話を繰り返し、私は愛想笑いで彼の話を聞いていた。 そして驚いたのはこの言葉…。 『…で、いつ会おうか?』 「え…?」 『お詫びだよぉ!!明後日ならオレ空いてるけど?』 「…ぃ、良いよ。お詫びなんて!!彼女さんに悪いし…」 『は?彼女?…オレ居ねぇよ?欲しいくらいだし♪(笑)ねっ、だから遠慮すんな!? あの今日一緒居た友達も一緒で良いからさッ!!オレも友達連れて行くし★』 あかりの言葉を思い出した。 (あかり、彼氏ほしいんだ…) 「うん!!分かった。 じゃあ明後日に駅前で!!」 (あかり喜ぶだろうなぁ-…)
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