最終章……早川の真実

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  早川とユカ。   私は二人を心から尊敬している。二人から得た信頼、二人への信頼は、生涯色褪せはしないだろう。   時には支えられ、私が支える事もあるかも知れない。     『あ? 気ぃ使ってんのか?』     そうではない。   私が二人に抱いている想い、いつかは二人にもそう想われたい。   ここに住み続けるのは、私に甘えを生むだろう。   早川が戻って来た今、ユカはもう心配はない。次は私が二人の様に強くなる番だ。     『ユカには? 言ったのか?』   『まだ……』     きっとユカは引き止める。でも、私はもう決めた……もっと強くなりたい。     『お前なりの考えがあるんだな?』   『うん……』     早川は、レポート用紙を差し出した。食後、電卓を叩きながら、書いていたモノだ。     『事務所の経費を計算してた。ずっとここじゃ、仕事にメリハリが無くなるから』     IOFのオフィス……早川と一緒に仕事が出来る。     『少し時間をくれ。これが決まったら、お前の部屋も探そう』     立ち上がり、開け放たれていた和室のドアを閉めると、急に早川は小声になった。       『それまでは……もう少しアイツの姉として、一緒にいてやってくれないか?』     血の繋がりが無くとも、ユカとは一生姉妹のつもり。     『俺から言って聞かせるから……もう、アイツの悲しい顔は見たくないんだ……』     『うん……分かった』     突然の決断は、図らずも早川を追い込んでしまっていた。   確かに早川の退院で、押し出される様にして出て行っては、ユカにも気を使わせる。     今は、この決心だけにしておこう。       『ケンちゃん、今朝渡したカードは? 明日お金下ろしたいんだけど』     突然、ユカがドアを開けた。     『あ、ああ……』     何故か、早川の態度がオドオドし始めた。     『明細は?』   『え? 捨てた』   『もうっ! いつも言ってるでしょ? 必ず持って来てって!』     こうして見ていると、二人は既に夫婦だ。     (あれ? そういえば)     『ねえねえ、二人はいつ籍を入れるの? 生まれる前には入れるのでしょ?』       早川が顔を押さえて、背を向けた。       『そういえば! プロポーズのやり直しがまだだった!』     ユカが大声を上げた。
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