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僕は、彼には悪魔が宿っているような気がしていた。彼は、僕の望んでいることを知っているように思える。その望みを叶える代償はあまりに大きいが、僕はそれを間違いなく望んでいる。しかし彼は、その望みを実現する手伝いをしようとは決してしなかった。僕にしても、それを実現させるつもりはない。実現させることによる代償を恐れているのだ。
彼は、自身が持つ悪魔の力を、会話という形で利用していた。彼は口数こそ少ないが、相手の言いたいこと、言わせたいことの全てを瞬時に悟り、それに添う内容の言葉を口に出すのだ。僕が彼に劣る決定的な理由は、この力だろう。
彼のそばにいる人間は、僕を除き、皆彼を心から信頼している。僕の周りの人間も似たような状態だが、彼には遠く及ばないだろう。気が付けば、僕の駒のほとんどが彼の元へ行ってしまっていた。
だが僕がそうであったように、彼にも真に親友と呼べる存在はいないように見えた。
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