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 彼と僕はいつも一緒にいたが、次第に居場所が変化していった。彼が来る以前は、クラスは僕を中心に一つになっていた。しかし彼が来てからは、クラスははっきりと二つに別れた。不真面目な人間の集まりと、真面目な人間の集まりだ。その二つの集まりの中心は、言うまでもなく彼と僕だ。二学期の終わり頃には、彼と僕の名は学年中に染み渡り、学年までもが二つの派閥に別れるようになった。    彼が中心とは言え、彼自身は自分がその集団を取り仕切っているつもりはないようだ。彼の下に集まる生徒も根っからの悪ではなく、彼の不良ぶりに憧れただけのことだった。悪が格好良く映るのは、中学一年生という歳を考えれば自然なことだ。不良組には男子生徒のほとんどが入っていた。  ただ、彼の意志一つでその集団を動かせたのは事実だ。不良組に補導される者が一人もいなかったのは、彼が抑止していたからに他ならない。そうして彼は、少しずつ教師の信頼も得ていった。  引き替えこちらの真面目組は、つまらない生徒の集まりだった。僕の意見を絶対と思っていて、どんなにおかしな内容でも心から信用するその様は、なんとも滑稽なものだった。  彼と僕は、言わば二つの円の接点のようなものだ。彼はこちらの集団にもある程度顔は利き、あちらの集団の生徒も僕の言うことは逆らわない。この学年は、円と円の接点を軸に回転しているのだ。
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