嘲笑

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 二学年になる頃には、三年生の生徒たちにも彼の顔は広まっていた。それと同時に、おかしな噂まで流れ始めた。    曰わく、あいつは、ヤクザと繋がってるらしい。曰わく、薬に手を出しているらしい。曰わく、他校でヤバいことをしてこっちに送られてきたらしい。    一つとしてまともな噂はなく、もちろんそれらは何の根拠もない「らしい」でしかない。しかし、その噂が彼の生活に良くない影響を与えているのは事実だった。  もちろん彼には噂を裏付けるような気配など微塵も感じられないが、親に止められたから、友達が彼とは付き合わないと言ったからという些細な理由により、少しずつ仲間たちは離れていった。彼のように完璧な男でも、中学生の浅はかな思考には勝てないようだ。軽い気持ちで一緒にいた者たちは、軽い気持ちで抜けていった。    一方僕は、彼に奪われかけていた椅子を再び取り戻していた。
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