嘲笑

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 そんな中、夏休みにクラス会をすることが決まった。と言っても、親しい一部の仲間たちを集めてバーベキューをするという下らないもので、僕は内心渋りながらも賛成の意志を示した。    僕は、彼がその場に来るのかを気にしていた。メンバーは既にほぼ決定しているが、その中の一人の女子生徒が、彼も混ぜることを提案したのだ。彼はクラスで孤立していたが、この機会を活かせばクラスに溶け込ませることができるかもしれないというのが、その生徒の意見だ。  僕は彼女に苛立ちを覚えずにはいられなかった。彼女が余計なことを言わなければ、僕はこの行事をただの退屈なものとしか捉えなかっただろう。しかし彼女の提案により、僕はことを楽観視できなくなった。    その誘いに対する彼の答えは、予定が合えば行くというものだった。その答えは、更に僕の気持ちを不安定にした。彼が来なければいいという期待と、来るかもしれないという不安の入り混じった気持ちで、僕はその行事を待たねばならなくなった。  何故そこまで彼が来ることを嫌がったのかと言えば、僕は彼が恐かったのだ。彼と共にいることによる息苦しさはもちろんのこと、彼と級友が仲良くなり、再び彼に僕の地位を奪われることを僕は恐れていた。    実を言えば、彼を陥れることとなった噂の発信源は、僕だった。全ては彼から地位を取り戻すためにやったことだ。そしてその狙いは成功し、彼は一人になった。  しかし、彼は知っていたのだ。あの噂は僕が流したということを。直接知る術はなかったが、彼は直感的に理解していたに違いない。そのことは、あの嘲笑が物語っている。
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