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 僕は人に嫌われている。  そのことに気付いたのは、小学校四年生の時のことだった。  自分と接する時と他の人間に接する時では、いくらひいき目に見ても態度が違うのだ。もちろん後者の方が明朗に見え、僕に対しては明らかに声の調子が落ちていた。  そんな調子にもかかわらず数年間気付かずに過ごすことができたのは、ひとえに僕の考えの浅はかさが原因だった。また、そのことこそが僕が嫌われる大きな要因だったのだろう。とは言え、今更そんなことに気付いても仕方のないことだ。  素っ気ない態度はいつしか無視へと変わり、ついには暴言まで浴びせられるようになった。  それでも僕は、友人が好きだった。なんとかして以前のような関係に戻りたかった。しかし、自分がどうしてそのような仕打ちを受けるのか分からない。そのことが僕の混乱に拍車をかけ、友人に対する恐怖さえもを生んだ。  そんな当時の僕が心を許せたのは、義理の両親だけだった。元の親についての話は既に知らされていたが、実の親ではないことなど僕には関係なかった。彼らは僕に十分な愛情を注ぎ、僕もそれを素直に受け入れていた。しかし、これからそれさえも失うことになろうとは、当時の僕には予想できるはずがなかった。
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