嘲笑

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 悶々とした気持ちを抱えたまま、当日を迎えた。行事を行う場所は、市内の小高い丘の上だった。参加者は学校の校門に集合し、そこから徒歩で移動するという計画だった。    僕は、誰よりも早く校門に着いた。不安な気持ちのおかげで一睡もできなかったため、予定より早く家を出たからだ。  しばらく待っていると、徐々に参加者が集まってきた。やがて、彼を除く全員が集まった。    定刻の三分前になると、僕は鼓動が速まるのを感じた。呼吸が乱れ、緊張を隠すのに必死になった。  しかし、十分過ぎても彼は現れなかった。僕は深い安堵の息を吐き、そして心から残念だという口調で、彼抜きで出発することを提案した。彼を誘った女子生徒が心残りがあるような表情をしたが、誰も反対することはなかった。    僕は、級友たちとつまらない会話をしながら、目的地へと向かった。数十分歩いて、ようやく予定していた小高い丘にたどり着いた。  そこに彼がいた。
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