嘲笑

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 家に着くと、僕は身を裂かれるような屈辱の念に駆られた。    彼は、わざとあの丘で先回りして待っていたのだ。寝坊が嘘だということなどは分かりきっていた。  僕は彼が転校してきてから、常に彼の動向を伺ってきたが、彼が学校を遅刻したことは一度もなかった。加えて、今日の集合時間は、学校のそれよりずっと遅く設定してあった。  彼は、僕に淡い期待を抱かせ、そしてより大きな絶望に陥れるためにああしたのだ。それ以外に彼が遅れてくる理由が考えられない。  彼がすんなりと級友たちと打ち解けられた理由も、僕には分かった。彼は、誰がどういう反応を好むか、全て知っていたのだ。  恐らく彼は、休み時間に僕と級友が話している内容を、窓の外を眺めるふりをしながら聞いていたのだろう。僕が少しずつ見つけ出したつぼを、彼はあっさり盗んでいたのだ。僕は、自分から彼に答えを与えていたというわけだ。これ以上間抜けな話が他にあるだろうか。
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