混乱

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 生徒会長の立候補者が、僕以外に誰もいないのだ。生徒会長立候補者の中から得票数に応じて副会長も決めなくてはならないため、最低でも二人は必要になる。一人では選挙ができないのだ。    恐らく他の者は、彼と僕の二人が生徒会長に立候補すると確信し、これでは勝ち目がなく惨めな思いをするだけと考えて遠慮したのだろう。分からない心情ではない。  ところが、彼が立候補しなかったのが計算外だったようだ。僕は彼が立候補するとは毛頭思っていなかったため、何故他の生徒がそう思ったのかは分からなかった。教師ですら、彼が立候補すると考えて疑わなかったようだ。    とにかく、今年の選挙は異例中の異例だった。焦った教師たちは立候補者を募ったが、不自然なほど誰も立候補する者はいなかった。生徒は皆心から彼がやるべきだと思っていたのかもしれない。ここまでくると異常なように感じた。    仕方なく推薦という形をとることになり、言うまでもなく彼が選ばれた。満場一致だ。
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