混乱

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 しかし、元々立候補者ではないのだから、彼にはやる気などあるはずがない。第一回目の生徒会組織の集会にも、彼は来なかった。それでも自分たちで決めたこと、誰も文句を言う者はいなかった。  僕も正直なところ、彼には来てほしくなかった。僕が生徒会長として意見をまとめている姿を見たら、彼はまたあの全てを見透かす目で僕を見るだろう。相変わらず僕は彼が苦手だった。    しかし回を重ねると、彼も少しずつ顔を出すようになった。今まで空席だった椅子が、彼によって埋められた。  彼は、自分から発言することはほとんどなかった。僕の演じる生徒会長という役を見るただの観客だったのだ。僕は恐らく酷評だったことだろう。僕は彼の冷たい視線を気にしながら演技を続けた。    それでも僕は、彼に負けまいとわざと彼に意見を求めることもあった。そのたびに彼はその場にあった適切な意見を言った。彼の意見はいつも、誰もが納得するような完璧なものだった。彼が意見を出す度、教師や他の級友たちは満足げな表情をした。大方、彼を選んだのはやはり正解だったとでも思っているのだろう。僕だけがそれを不服に思っていた。ただ単純に彼の評価が高まるのが嫌だった。
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