混乱

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 彼は僕の指摘を聞くと、顔をしかめて返答に詰まっていた。僕の言ったことは間違いなく正しかった。彼には僕の言うことを聞き入れることしかできない。当然のことだった。    僕はその様子を見ながら、なんとも愉快な気持ちになった。彼が僕の言葉で少しでも動揺したことは、これが初めてだ。  幸福感にも似たその感情は、瞬く間に僕を支配した。こみ上げてくるその感情を必死で押し殺し、押し殺しながらも快感を感じている。僕は病み付きになりそうだった。    恍惚感から脱して落ち着くまでしばらくかかった。あるいは数秒もなかったのかもしれないが、僕には分からなかった。彼は小さな声で、改善するという旨のことを言っていた。予想通りの答えだった。  ふと周りを見回すと、教師が満足げな顔で頷いていた。教師たちは、自分が注意しても彼を説得できないと諦めて、僕がそれを指摘するのを待っていたのだろう。僕はそんな教師たちを見て小さく失笑した。
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