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家に帰り、僕はあの感情をどう扱うべきか考えた。あの感情は間違いなく彼に勝利したという錯覚からくるものだった。
つまり僕は、それほどまで彼に劣等感を抱いていたということなのか。それほどまで彼からの勝利に飢えていたのか。
僕は今まで、彼に勝つためにあらゆる努力を重ねてきた。時間のある限りは勉強をし、その合間には身体を鍛えた。それでも、彼には勝てなかった。
たが、あの小さな指摘一つでそれが叶ってしまったように思えたのだ。冷静に考えれば、それがただの馬鹿な思い違いでしかないことはすぐに分かるはずだ。しかし、不意に込み上げるあの感情は抑えようがなかった。
そして僕は今、あの快感をもう一度味わいたいと思っているのに気が付いた。本来ならば、あのような感情を抱いてはいけないはずだ。僕は、相反する理性と本能に苛立ちを覚えた。
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