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 六月のことだ。    僕の住む地域は、既に梅雨入りしていた。窓の外ではしとしとと雨が降り、身の回りのあらゆる物が湿気を帯びている。僕は梅雨が嫌いだった。僕は雨で体が濡れるのを避け、常に傘を持ち歩いた。  その女子生徒が僕に話しかけてきたのは、僕が止まない雨を降らす重い雲を眺めていた時だった。    彼女は、僕のクラスでは非常に大人しい小柄な生徒だった。輪の中で他の女子生徒が馬鹿騒ぎをして大声で笑っているときも、彼女は短い髪を揺らしながら、ただ静かに笑っていた。僕の記憶によれば、運動も勉強もまずまずの成績だったはずだ。  僕は同じクラスの男子生徒からいくつかの恋愛相談を受けたことがある。彼女はその主な対象となっていた。しかし、今彼女が僕にその恋愛相談を持ちかけているということは、全員が失敗しているということだろう。
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