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 何故彼女が他の女子生徒ではなく僕に相談したのか気になった。女子生徒同士でそのようなことをこそこそ言い合っているのを何度か耳にしたことがある。その時の女子生徒には、男子生徒を受け入れようとしない気配が漂っていた。  しかし、その理由はすぐに分かった。彼女の好意を寄せる相手が彼だったからだ。それを言われてから、彼女があのクラス会で彼を誘った女子生徒だと気付いた。恐らく、あの時から既に彼のことを気にしていたのだろう。    僕はまず、彼のどこが気に入っているのか訊いてみた。彼が他の生徒にどう思われているのか知りたかったからだ。  彼女は、少しの間目を伏せて考えたあと、彼に惹かれたことを、彼の方を半ば目で追いながら躊躇いがちに答えた。  しかし、それが彼の仮面の単なる装飾だとは、彼女は思いもしていないだろう。彼が他の人間、この僕でさえも見下していることには全く気付いていない。あまりに滑稽だった。声にならない笑い声が僕の中に広がった。    僕はそんな内面とは裏腹に、健気な小動物でも見るような、暖かい顔を作った。それで彼女は幾分安心したように見えた。    そして、この状況をどうすべきか、彼女の彼に関する問いに答えながら考えを巡らせた。
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