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 夏休みも終わりに近づいた頃、彼女のことを思い出した。そろそろ僕も行動に移しても良い頃だろう。夜になるのを待ち、彼女へ電話を掛けた。    三回ベルが鳴った後で彼女がでた。軽く雑談をし、僕は彼との仲について尋ねた。すると彼女は、次の日曜に隣町まで出掛けるということを言った。上手くいけば、彼に思いを告げるつもりらしい。言いながら明日のことでも想像しているのか、時折声が高くなり、そのまま消えていった。酷いときには、こちらが何を言っても受け答えをしなくなり、突然気が付いたように取り繕うこともあった。  とにかく、そのことは僕にとってはかなり好都合だった。次の日曜は夏休み最終日、今日から四日後だ。僕が祝福の言葉を彼女に送ると、彼女は僕に鬱陶しくなるほど何度も礼を言った。適当に受け答えした後、電話を切った。    それから僕は、今度は四人の男子生徒に電話を掛け、次の日曜に一緒に隣町に行くことを約束させた。宿題が終わっていないからと渋る生徒もいたが、結局は僕の提案を承諾した。    あとは、日曜になるのを待つだけだ。僕はその日の分の勉強をすると、ベッドに横になった。  いつの間にか、外から鈴虫の声が聞こえるようになっていた。
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