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 例えば、級友との楽しそうな話。本当の僕は、心の中で彼らを馬鹿にし、蔑んでいる。面白味の全くない言葉でも、僕が声を上げて笑ってやれば、それだけで彼らは喜ぶのだ。僕が適当に突拍子もない言葉を返すと、彼らも笑い出す。低レベルすぎる会話に、冷めた気持ちを抑えながら加わっていた。    学力の面でも、彼らは下級だ。悪い点数をもらっても、ふざけて笑いながら解答用紙を振り回し、全く反省の色を見せなかった。そんな彼らを馬鹿にする言葉を口にしたこともある。滅多に出すことのない、心からの言葉だった。ところが彼らはそれを冗談として受け取り、僕の言葉は空振りに終わった。  頭の悪い彼らから信頼を得ることも、簡単なことだった。ただひたすらに、馬鹿を見るほど信用し、どんな過ちも許してやった。それだけで彼らは僕を信用するのだ。  僕には、親友と呼べる人間は一人としていない。あるいは向こうはそう感じているかもしれないが、それは一方通行に過ぎなかった。  仲間外れを作らないことも、僕の計算の範囲内にある。そうして僕は、敵になりうる存在を最小限に抑るよう努め、更に言えば、誰もを僕の駒にするつもりだった。もちろん、それは性別を問わなかった。
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