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 意義を感じられない授業を極めて真面目に受けることも、もちろん教師の信頼を得るためだ。欠伸することを我慢し、眠りそうになれば腿を鉛筆で刺す。そして、いかにも僕は一生懸命授業を受けているという顔で、黒板と教師を見つめる。教師に対する僕の最大限の誠意であり、譲歩だった。  もちろん内心では全く別のことを考えているため、独学による家庭学習が必要になる。それでもまずまずの成績を修めていることは、教師が必要ないことを示す根拠となった。ただ僕に高い評価を与えれば、それだけでいいのだ。  つまり僕は、自分を除く全ての人間を見下している。そして、これからもその姿勢を曲げるつもりはない。このままの状態を貫き通せば、僕は必ず成功する。そう信じていた。  僕が彼と出会ったのは、そんな時期のことだった。
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