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「今日から教育実習の先生に来てもらう。
先生、短くて構わないので、挨拶してください。」
50程の優しそうな先生が連れてきたのは、黒目黒髪に、キリッとした目鼻立ちの男性だった。
彼が部屋に入った途端、女子生徒は皆一様に黄色い声をあげた。
いや、一人だけだが、彼を見て慌てて視線を逸らした者がいた。
彼女の名前は桐生藍架(きりゅうあいか)。
彼女のイメージは…薄幸の美少女…と言いたいところだが、何処をどうみても薄幸ではなさそうだ。
実際、彼女は今年度(今は第2学年だ)転校してきたばかりなのに、その気さくな性格から、学年で一番友人がいると言っても過言ではない。
そんな彼女が何故視線を逸らしているのかというと…
「桐生!
自己紹介、お前の番だぞ!」
それはその内解るので、今は話を進めよう。
「は、はいっ!」
行き成り呼ばれたせいで、勢いよく立ち上がってしまった。
相当恥ずかしいだろう。
「えと、桐生藍架です。
よろしくお願いします。」
挙動不審になりながらも、なんとか自己紹介を終えた。
「…きりゅ…う…あい…か…?」
今度は教生先生の様子が可笑しい。
藍架の名前を聞いた途端、顔面蒼白になったのだ。
「市橋先生?
どうされました?」
判るとは思うが、市橋というのは教生先生の名前だ。
「い…いえ…なんでもありません…」
時間もないので、今日のSHRは終わった。
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