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「一仕事終えた後の一杯は非常に美味しく感じられるな」
ヴィンヤード邸の薔薇庭園。
サディアはゆっくりと息を吐き出した。そのそばにはテーブルで向かい合わせに座るシェイとミリアの姿もあった。フォルクスはと言うと…
「あのー、サディアさん。フォルクス様はあのままでよろしいんですか?」
ミリアが遠慮がちに問う。
「いい。むしろあのくらいやらねばアレは分からない。自分の非を理解させねばならない。情けは無用」
ミリアの淹れたダージリンティーを口に含みながら即答。
フォルクスは先程サディアの手にかかり、縄で逃げられないよう拘束されたまま、気絶していた。
「それにしてもミリアの淹れる紅茶は美味いな。シェイのミルフィーユも絶品だ」
満足そうに頷いてミルフィーユを食べるサディア。
ミリアもシェイも気恥ずかしそうに微笑む。
なんて優雅な昼下がりーーー。
「おい。」
「あぁ、サディア嬢ちゃんそれとってくれ」
「おい」
「これか?」
「そうそう、サンキュ」
「おい!」
その瞬間誰もがフォルクスを見て、ため息をついた。
「あぁ、フォルクス様。もう回復してしまったんですか。…ちっ。」
「今の舌打ちは何だ。」
「それは貴方が意識を取り戻してしまった事に対しての苛立ちでしょう。」
サディアは大きくため息をついた。そして指をパチンと鳴らしてフォルクスに向き直る。
「おい、お前たち。その粉は何だ」
「睡眠薬だ。致死量越えの、な」
シェイが答えるとミリアが笑顔で「どうぞ、フォルクス様」と睡眠薬入りのダージリンティーを恭しく持ってきた。
「そんなもの飲めるか!お前たちは主人の俺に睡眠薬入りの紅茶を飲ませるのか?」
「シェイ。紅茶が飲めるように腕だけ解放してやれ」
「ラジャー」
サディアがダージリンティーをすすりながらシェイに指示を出す。シェイはつまらなさそうに従った。
「お前たちは主人を殺す気か!」
「くだらん好奇心で使用人に毒薬を飲ませる主人は主人では有りません。ただの頭が狂った馬鹿者です」
フォルクスの叫びにサディアの痛烈な一言。フォルクスは悔しそうに顔を歪めた。
「さて、少しは弁明とやらをしますか?」
サディアは優雅に立ち上がってフォルクスに近づいた。
「あの毒薬は出来たばかりの新作なんだよ。そこに皆の茶があったから…」
「ついソレを入れてしまったと。そうですか…」
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