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それは幼い頃の記憶。
忘れることの出来ない、大切な、大切な思い出ーーー。
「ディアは大きくなったら何になるの?」
元気な少年の声。どこかの立派なお屋敷の庭から聞こえてくるその事は純粋で、悪気が無い目の前にいる少年を見ると少女は何故だか泣きたくなった。
「…執事。」
まだ10にも満たない可愛らしい姿に合っていないやけに落ち着いた少女の答えに少年は唾を飲んだ。
「執事ってことは…ヨウセイ学校に入るの?」
少年の問いに少女はこくんと頷く。
ヨウセイ学校と言うのは『執事養成学校』の事だ。男ならまだしも女の子、しかもこんな愛らしい少女がそこに行くと言った。少年は深呼吸してから満面の笑みを少女に向けた。
「なら僕、応援するね。そうだ!毎日お星さまにお願いするよ。ディアが執事になれますようにって」
ね?と少年は嬉しそうに笑った。すると今まで無表情に近かった少女がにこっとはにかんだ笑みを見せた。少年はそれまで座っていた所から立ち上がって言った。
「ディアが執事になったら僕に仕えてね。僕の執事はディアだけだ」
少年は右の小指を少女に向ける。
「うん。…約束」
少女は笑って小指を少年の指に絡めた。
そして歌う。
希望と夢の歌を。
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