‡ハジマリのウタ。‡

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「非常に迷惑かつ不快なお言葉有難う御座います。しかし私は貴方が嫌いなのでお言葉に応えるつもりはありません。そんなことよりさっさと顔を洗ってその低俗な頭を冷やしたらどうですか?」 「いやはや酷い言われようだね。本当に君は性格が腸捻転を起こしている。」 「フォルクス様は腸捻転の上にあちこちが複雑骨折しておりますね。ああ、分かるように言うと最低かつ人をすぐさま不快にさせるお心の持ち主です。こんな主人の執事は私くらいしか居ないでしょうね」 「その主人にそんな罵詈雑言を吐くのも天然記念物並、いや世界自然遺産並に珍しいね。ディア」 いったい何で比べているのか。最早二人にしかわからない規模の会話の中で、痺れを切らして部屋に入ってきたミリアは首を傾げた。しかも二人とも一目で嘘だと分かる笑みをはりつけているから余計恐ろしい。 「お二人とも負けず劣らずだと思いますよ…」 ミリアの非難にサディアはさっと顔をミリアに向け、簡潔に言いつけた。 「さて、そろそろお遊びは此処までにして、ミリア。フォルクス様の支度を頼む。私は仕事があるので」 サディアはパンっと手袋のついた手を合わせ、簡潔に告げると嵐のように去っていった。 サディアの去った部屋にはミリアとフォルクスのみ。フォルクスは一言も言葉を発しない。思わずこの場を飛び出たい衝動に駆られたがミリアは必死に耐えた。が。 「ったくあのクソ執事…」 フォルクスが恐ろしい声を出してサディアの恨みつらみを吐き出し始めたので、止めたはずの涙が再び溢れそうになるのを止める事は出来なかった。 しかし、ミリアは気づかなかった。 サディアの事を呟くフォルクスの顔がほんのり赤かったこと。そして彼女が珍しく置いていった懐中時計を愛おしそうに握っていた事。
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