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「さて…食事はいかがでしたか?フォルクス様」
サディアがにっこりと笑ってフォルクスに話しかけた。当のフォルクスは何か透明な液体の入っている小瓶で遊んでいた。
「なかなかだったよ。それよりこの薬の効果はどう?」
「ええ。素晴らしい効果ですね。おかげで殆どの使用人が寝込んでしまって全く作業が進みません!どうしてくれましょうか?」
サディアの顔が痙攣していく。フォルクスは嬉しそうに
「やった!この毒って高熱が出るだけなんだよね。それじゃつまんないから媚薬効果と激しい頭痛を引き起こすようにしといた。それでも無味無臭だから、イタズラにはサイコーだな」
フォルクスは見事なまでに無邪気な笑顔で椅子に座ったまま、首だけサディアに向けた。
「…やはりもう少し寝られた方がよろしいですね。貴方には苦しむ使用人達の気持ちが分からないのですか!?」
サディアの怒気を孕んだ声がホールに響き渡る。
「分かるけど、それにも勝るモノがあるんだ」
「何ですか、ソレは?」
珍しく真剣な顔のフォルクスに顔を近づけた。耳元でフォルクスが呟く。
「俺の偉大なる好奇心❤」
グサリ。
サディアは即座に腰の青竜刀を抜いた。フォルクスに当てるつもりが、当の本人が消えて、標的を失った刀は豪奢な椅子に突き刺さる。
「わー、ディア今マジで俺狙っただろ?」
「その腐った頭の機能を停止させようとしただけです」
サディアは絶対零度の笑顔のまま、青竜刀を椅子から引き抜いて答える。その視線は空に浮かぶフォルクスを冷たく見上げていた。
フォルクスはサディアの刀が刺さる前に空に瞬間移動した。そして今空に浮いているのは自分で発明したスカイエアー・シューズのおかげである。瞬間移動もフォルクスの発明品だが、一回の起動に時間がかかる為、サディアにはすぐにすべて計算済みだとわかった。
「本当に良い性格ですね。しかし、貴方は後先考えて行動してますか?使用人がいなくては料理すら出来ないのに」
サディアが悔し紛れにそう言うとフォルクスは少し意外そうな顔をしたが、すぐに人の悪い笑みでサディアの近くに来て呟いた。
「サディアは何でも出来るだろう?何の為に残したと思ってる?俺がそこまで浅はかとでも?」
なんて黒い、憎たらしい笑み。
サディアは刀を握り締めた。
「私が嫌だと言ったら?」
「君はこの家の執事だ。主人は俺。いくら何でも逆らえる筈が……」
な………い………?
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