14人が本棚に入れています
本棚に追加
――――――
その頃学校内の生徒達は、一人また一人と家へと帰っていた。
「おい、菜々子。書道セットはどうしたんだよ?」
急に話しかけられたその子は、辺りを見渡し確かに書道セットが無い事に気がついた。
「え…、あっ旧校舎の書道室に置き忘れちゃった…。どうしよう水無瀬君…。」
「良かったじゃんか、幽霊と鉢合わせ出来るかもしれないじゃんか。」
ニヤリと笑い、先程から菜々子に対して馴れ馴れしく話しかけているのは同じクラスの水瀬渉(みなせわたる)である。
「嫌、絶対に嫌だよ。
、今日から鍵も掛かるから入れないよ。怖いもの…」
そして、可愛らしい声で、話す、このおっとりとした女の子は、あの石川美帆の妹である。
菜々子のクラスである一年二組では、問題の旧校舎が話題に挙げられていた。
『旧校舎では幽霊が出るらしい』と。
「だって、菜々子。
旧校舎の書道室に習字セット忘れて来たんだろ?ついでにさ、音楽室と理科室も覗いて来いよ。そうしたら、クラスの勇者になれるぜ?」
「書道室はともかく、他の教室は鍵がかかってるはずだよ。第一、書道室どころか、入り口には、鍵がかかっててもう入れなくなってるじゃない。」
内心ホッとしながらそう言った。
「あれ、もしかして知らないのか?入口の鍵は壊れてるから、明日付け替えるんだってさ。
それだから、生徒が悪戯で入るだろうって思って学校側は注意したのさ。」
嘘、入れちゃうの?
断ったら馬鹿にされちゃうよね。
「‥分かったよ。でもお姉ちゃんには内緒にしてよね。
余計な心配かけたくないから。」
本当は、行きたくないけれどさっさと行ってしまおう。
「さっさと戻って来いよな。」
直ぐに帰って来るだろうと思ってたから、少し怖がらせてやろうっていうちょっとした悪戯だった。
最初のコメントを投稿しよう!