―終業式―

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  その話の長さに耐えているうちに既に五十分が経過していた。 余りの暑さでダウンしてしまった俺は、もう何の話をされているのかさえ分からなくなってしまった。 「翼、翼ったら!また話を聞いて無かったでしょ!」 この血相を変えて恐い顔をしているのは、幼稚園からの幼なじみの石川美帆である。 肩まで伸びる黒髪にパッチリとした目、すらっと長い足など、そのスタイルの良さは俺の好みにドストライクなのだが、如何せん気が強すぎるのだ。 「えっ、否聞いてたぜ。交通事故には気を付けましょうだろ?」 毎年、長期休暇前に言う事は基本的には変わらないからなあと一人納得していた。 「それは、最初の方でしょ。やっぱり聞いて無かったんじゃないの!そうじゃなくって、学校の旧校舎が取り壊されることが正式に決まったのよ。」 流石、真面目なだけあって最後まで話をきちんと聞いていたらしい。 「冗談だろっ?怪奇現象が起こるって専ら噂になってるんだぜ?その旧校舎を取り壊すってのか?」 「そうよ。だから夏休み中は危険だから近づかないようにだって分かったかな、森川君?」 開いた口が塞がらないってこんな時に使うに違いない。 困るぞ、壊すだって? 冗談じゃないぜ。 ふざけるのも大概にしてくれよ。俺は、同じクラスの 斎藤直哉と、世間で言う、七不思議ってのを調査しようと約束したばかりなんだよ。 おまけに、何の因縁か、舞台はその壊される予定の旧校舎! 「翼君、また何か企んでるでしょ、絶対に旧校舎の中で遊んで怪我をしたとか言って、3年1組の恥になるような行為は慎んでよね。分かった?」 「へぇ―い。」 行く気満々ですから。 八月に行く予定だったが、壊すなら変更だ。 今日にでも行こう。直哉を誘わなければ。 「返事は、はいでしょ。」 俺は、その時美帆の目が光ったのを見逃さなかった。 「はい…。」 三年間、学級委員と今は生徒会長との掛け持ちをしている美帆の監視は恐いが、俺は、斎藤との約束優先のつもりだ。
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