第1章 森の子守歌

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森が深い闇に飲み込まれ、森の全ての動物が寝静まった時、遠くの山から狼の遠吠えが響いていた。だがその遠吠えは、まるで闇の住人のような低く背筋が凍るようなものだった…。その遠吠えは、一刻が過ぎると闇の中に消えていった。そして、やがて山々の間から光が差し込んできた。それは、まるで闇を追い払うようだった。やがて、森の奥にある精霊が住むと昔から言い伝えられている泉から美しい歌声が聞こえてきた…。 小鳥が歌い出し 私も歌う 自由に飛べない私でも 歌は歌えるから… 会いたい君に 会えないけれど 君が私を見つけるまで 私の闇の鎖が外れるまでこの森の中で ずっと…ずっと… ジャラと少女の足の付け根にある闇の鎖が鳴った。長い鎖の中で少女は、背中にある真っ白な翼を羽ばたかせ、またゆっくりと元に戻した。その顔は哀しげで、とても美しいかった。カールがかった睫毛に、薄く吸い込まれそうな青色の目、見た人は必ず目を奪われてしまうほどだった。少女は目に一杯の涙を浮かべて、泣き出しそうになった時、一羽の小鳥が少女の肩の上にちょこんと乗った。小鳥は泣いている少女の方へと顔を向け、首を傾げた。そして、少女の涙を飲んだ。しかし、しょっぱかったのか頭を振り、涙を飛ばした。そして、それを何回も繰り返した。まるで、「泣かないで。」と言っているかのように…。やがて、少女は小鳥がいることに気づき、泣くのを止めた。すると小鳥は、少女の頬に体をすり寄せて慰めて、そして甘えてきた。そう、この小鳥は少女のことを母だと思っているのだ。それは、少女が傷付いた小鳥を助け、育てたからだった。少女は、そっと小鳥を撫でた。小鳥は気持ちが落ち着いたようで、少女の肩の 上で眠ってしまった。少女は、その小鳥を見て、少し微笑んだ。ほんの少しの心が落ち着く時だった。そして、我に返ったように、ふと何かを思い出した。ここに来る前の楽しかった記憶を…。
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