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「ラフェルッ!
今年はすごいわ!!」
「ラシェア・・・?
どうしたの?」
明るい様子で駆け込んで来た妹に、ラフェルは少しぎこちない微笑みを浮かべる。
「ガイル・フェルクールの子息と、ティカド伯爵の子息と、レックリーオ家の末子が国試に出るわっ」
ラシェアの言葉に、ぎこちなかったラフェルの表情が素直な物に変わる。
「すごいっ。
国府に仕えるのを渋ってた人達じゃないかっ!」
「でしょっ?
ふふっ。
しつこく口説いたかいがあったなぁ」
「・・・・・・え・・・?」
緩んでいたラフェルの心と瞳が、凍り付いた。
ラシェアはそれに気付かない。
「年齢的にもラフェルの代に活躍するわね」
「・・・そう、だね」
突然ぎこちなくなった兄に首を傾げながら、ラシェアは楽しげに笑っている。
妹の楽しそうな話に、ラフェルは生返事しか出来ない。
わずか数ヵ月前までは何とも想わなかった双子の片割れを、彼は恐れるようになっていた。
ラシェアはよく外に出る。
訓練所にも顔を出し、兵卒と気軽に話をする。
省庁を回り、問題や作業に関して意見を求め、出したりもする。
市井に身分を隠して出回り、地方貴族の領地にも出かける。
身分の上下に関係なく接するラシェアは、自分の名を出そうとしない。
それが更に、下位の者達の間で人気を高めている。
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