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「つっ・・・」
「目が覚めましたか?」
「・・・メイザス伯爵ッ?!」
ノロノロとまぶたを上げたティエラに、冷ややかな声が届く。
起き上がろうとしても、両腕と足が縛られているらしく起き上がれなかった。
ティエラは何とか体をひねって起き上がると、そこは暗い廃屋のようだった。
周囲には、数人の男達。
だが、話し合いをしていた男達ではない。
「・・・これは、何の真似だ」
厳しい口調のティエラに、メイザス伯爵は暗い笑みを浮かべる。
「殿下は、復讐したいとは思いませんか?」
その一言に、ティエラはビクリと震えた。
かつて、何も知らなかった頃にそれをしようとした。
だが、己の愚かさを知っただけ。
「・・・民は、それを望まない」
「ご立派です。
民の事を第1に考えられるとは・・・。
ですが、我らを支援しているのは、その民なのですよ」
メイザス伯爵はティエラの耳元に囁いた。
ティエラの呼吸が浅くなる。
それはない、と否定しながら、もしかしたら、と言う思いが頭をもたげる。
「あのような蛮族に我らの故郷が、踏み荒らされてもよろしいのですか?」
(踏み荒らす・・・?)
「大切な故郷を、取り戻したいとは、思いませんか?」
(思う・・・)
「さあ、あの悪鬼のごとき王太子を打ち倒しましょう」
「・・・悪鬼とは、誰の事だ」
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