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吐き捨てるような言葉に、ティエラは何の事か分からなかった。
ラフェルは眉をきつく寄せる。
「貴方が王太子だと言うのなら。
王都にいるのはだれなのでしょうね?
殿下」
「・・・何が言いたい」
1歩ずつ前に進むラフェルの声は固い。
ラフェルを見上げて、ティエラは違和感の正体に気付いた。
額には玉のような汗が浮かび、顔色はいささか悪い。
(まだ治ってないのか!)
病気はまだ治ってはいない。
ラフェルは息が上がるのを必死に抑える。
「人望厚い王太子。
武勇に秀でた王太子。
・・・偽りの仮面はいつまでも続くものではないぞ。
ラシェア・エラニア・カルクタニアッ!!」
突き付けるような言葉に、驚愕の視線をティエラはラフェルに向ける。
だが、ラフェルはフッと不敵に微笑んだ。
「敵国に魂を売ったか。
愚劣な」
「否定しないのか?
そうだろうな。
お前が1番よく分かっているはずだ。
お前はただの簒奪者。
民を騙す大いなる詐欺師。
さっさと消えるのはお前だっ」
「・・・黙れ下衆が」
剣が一閃した。
近くにあった机を叩き斬る。
ジリジリと間合いを縮める。
後1歩と言うところで、ラフェルとメイザス伯爵の間に火が走った。
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